アサシンクリードシリーズ第4作目にあたる『アサシンクリード リベレーション』。
この作品は、2人の伝説的アサシン──エツィオとアルタイル──それぞれの物語が静かに、しかし確かに終焉へと向かっていく重要なエピソードです。
圧巻のオープニングが物語の幕を開ける
ゲームを起動してまず圧倒されるのは、まさに映画級ともいえるオープニングムービー。
一切のセリフがなくとも、演出と音楽、表情の一つひとつからエツィオの覚悟が伝わってくる演出は鳥肌モノ。
当時はPS3タイトルながら、グラフィックのクオリティは今見ても見劣りせず、むしろ“美麗”と呼ぶにふさわしい映像美を誇っています。
アサクリシリーズが映像面で高く評価されてきたのも、この頃の完成度を見れば納得です。
舞台は活気あふれるコンスタンティノープル
今作の舞台は、東西の文化が交差する都市、コンスタンティノープル(現在のイスタンブール)。
前作までの洗練されたローマとは違い、ここではどこを歩いても人の喧騒に包まれていて、決して「美しい街並み」とは言えないかもしれません。
しかし、そのぶん「多様性」や「生きた街」という印象が強く、道を行き交う人々、異文化が入り交じる空気感は、まさに旅人エツィオの目線を体験しているかのような没入感を与えてくれます。
雑多で力強く、それでも魅力的──そんな都市を自由に駆け巡る楽しさは、今作ならではの魅力の一つです。
中年となったエツィオが放つ“深みある魅力”
『リベレーション』の最大の見どころの一つは、何と言っても中年となったエツィオの姿でしょう。
青年期ではキザで茶目っ気のある若者だった彼も、今やアサシン教団の大導師(マスターアサシン)。
その立場や年齢から、重厚さと落ち着きが加わり、まさに“大人の男”としての魅力を放っています。
とはいえ、若い頃のユーモアや人懐っこさは失われておらず、新たな仲間たちとの関係性も自然に築いていきます。
中でも、任務のために楽師に扮するシーンでは、エツィオの“美声”まで披露され、ファンならずともニヤリとしてしまう名場面。
重ねた年月は彼をただの英雄にとどめず、人間的な奥深さを持った存在へと昇華させています。
シリーズの終章としての重み
今作では、これまでのシリーズで築かれてきた人間関係がほとんど一新されているのも特徴です。
懐かしいキャラクターたちの出番はほとんどなく、登場する旧知の人物といえば、妹クラウディアに宛てた手紙のやり取りくらい。
ただしこの手紙のやりとりには、兄妹の絆やエツィオの素顔が滲み出ており、セリフの少なさが逆に感情を引き立たせる演出となっています。
新しい物語が展開されていく中で、エツィオの“過去”と“現在”が交差する描写も美しく、長年追いかけてきたプレイヤーにとっては胸に迫るものがあります。
もう一人の伝説──アルタイルの物語も
そして忘れてはいけないのが、シリーズ初代主人公アルタイルの存在です。
『リベレーション』では、エツィオの旅を通じてアルタイルの生涯も描かれていきます。
師として、父として、そしてアサシンとして──彼がどのような最期を迎えたのかが明かされ、シリーズファンにはたまらない“終焉”が待っています。
新たな遊び「アジト防衛戦」は賛否両論?
本作で導入された新たなシステムの一つに、「アジト防衛戦」があります。
これは、リアルタイムで進行する戦略的なシミュレーションゲームのような内容で、プレイヤーは敵の進行ルートを予測しながら、アサシンたちを配置・指示して戦局を制するというもの。
ただ、正直なところ筆者にはあまり合いませんでした。
アサシンクリードの魅力は「自由に動ける快感」や「流れるようなアクション」にあるはず。
そこに“止まって指示を出す”というリアルタイム戦略の要素が入ってくると、テンポが崩れてしまう印象でした。
幸いにも、序盤のチュートリアル以外はプレイヤーの選択でスキップできる点は救いです。
導入自体は意欲的ですが、シリーズ本来の面白さとは相性がよくないと感じたプレイヤーも多かったようです。
多彩な爆弾システムで暗殺の幅が拡張!
一方で、今作の武器面では目を見張る進化がありました。
その代表格が「爆弾クラフト」です。
攻撃用の爆弾だけでなく、煙幕のように敵の目をくらませるものや、陽動に使える音爆弾、時限式で複数を一網打尽にできるものまで、用途は実に多彩。
素材を集めて自分好みにクラフトするシステムも、探索のモチベーションを高めてくれます。
もちろん爆弾を使わなくてもゲームクリアは可能ですが、使うことで戦術の幅が一気に広がり、「自分だけの暗殺スタイル」がより強く打ち出せる設計になっていました。
ただ、便利すぎるがゆえに、従来の近接武器や弟子システムの存在感がやや薄くなってしまったのは少し残念かもしれません。
グラフィックと操作性はシリーズ随一の快適さ
PS3世代のタイトルでありながら、本作のグラフィック表現は今見てもなお美しく、コンスタンティノープルの雑踏や重厚な建築物の数々はリアリティに満ちています。
操作性も、シリーズを重ねるごとに洗練され、今作ではとくに「移動」と「戦闘」の一体感が抜群でした。
ただし一部のシーンでは、グラフィックのリアルさが裏目に出たケースも。
特に夜のシーンや屋内では視認性が悪く、進行ルートが分かりづらくなることがありました。
ミスが許されない場面では、この“見えにくさ”がストレスに直結し、テンポが落ちてしまう原因にも。
渋さと色気を兼ね備えた“円熟のエツィオ”
物語面では、何といってもエツィオの“成長した姿”が大きな見どころです。
かつてはプレイボーイのような一面もあった若き日の彼が、今作では大導師(マスターアサシン)として、精神的にも肉体的にも成熟した男として描かれています。
それでいて、どこか人懐っこさが残っているのが彼の魅力。
新たに登場するソフィアとのラブストーリーも描かれ、まるで恋に不器用な中年男のような純情さが垣間見えるのも微笑ましい。
「色気」と「渋さ」を兼ね備えた、まさに“大人のエツィオ”が堪能できる作品です。
デズモンド編はやや難解だが、シリーズの柱でもある
現代パートの主人公・デズモンドにも物語は用意されています。
前作で衝撃的なラストを迎えた後、彼はアニムスの深層に閉じ込められた状態に。
そこで登場するのが、これまで断片的に語られていた被験体16号。
このパートはやや抽象的かつ哲学的で、正直“難解”という印象を受けました。
プレイヤーによっては「考察のしがいがある」と好意的に捉える人もいれば、「早くエツィオ編に戻りたい」と感じる人も。
物語の全体像を把握したい人にとっては欠かせないパートですが、純粋にアサシンの物語を追いたい人にとってはやや冗長に感じられるかもしれません。
アルタイルの“その後”が語られる感動のエピソード
『リベレーション』というタイトルの通り、今作ではもう1人の伝説的アサシン──アルタイルの真実にも迫ります。
エツィオがアルタイルの記憶を追体験することで、初代では語られなかった彼の晩年や、家族との関係、教団の未来に託した想いなどが描かれていきます。
老いとともに訪れる孤独と試練、それでもアサシンとしての信念を貫いたアルタイルの姿は、静かな感動を呼びました。
最期の選択に込められた覚悟は、シリーズのファンであれば涙なしには見られません。
そして、その物語を静かに見届けたエツィオが最後に選ぶ“言葉”こそ、アサシンクリードというシリーズの核に迫る名シーンとなっています。
実際にプレイした人たちの評価は?
多くのプレイヤーが共通して挙げるのは、以下のような点です:
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✅ 「シリーズを締めくくるにふさわしい深みあるストーリー」
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✅ 「アルタイルとエツィオという2人の主人公を見届けられる満足感」
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✅ 「操作性・演出・音楽ともにシリーズ随一」
一方で不満点としては、
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❌「アジト防衛線のミニゲームが本編と乖離している」
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❌「一部ステージの視認性が悪くてプレイしづらい」
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❌「現代パートがやや難解で物語への没入を妨げる」
などの声もありました。
とはいえ、全体としては**「シリーズファンならプレイ必須」**と評される作品であり、初期三部作の集大成として高い評価を受けています。
まとめ:シリーズの“魂”に触れる一作
『アサシンクリード リベレーション』は、ただの続編ではありません。
それぞれの時代を生きたアサシンたちの人生に深く踏み込み、彼らの“終わり”を見届けることで、アサシンクリードというシリーズの本質が見えてくる一作です。
戦いの中にある美学。
生き方の選択に宿る信念。
そして人を愛し、人に託すという想い──
あらゆる面で「静かに心を揺さぶる作品」であり、物語の重みをしっかりと受け止めたいプレイヤーには、間違いなくオススメです。