最先端のアップデートで隅々まで色鮮やかに蘇る壮大なオープンワールドを体験しよう。新たに追加されたライティング、環境面のアップグレード、高解像度テクスチャ、描画距離の向上、『グランド・セフト・オートV』のスタイルを採用した操作性や照準などにより、おなじみの世界が新次元のディテールで描かれる。
すべてはリバティーシティからはじまる。行く先も襲いかかる相手も革命的なまでに自由な『グランド・セフト・オートIII』では、犯罪の裏社会を体験できる。その度胸があればの話だが。
開発はロックスター・ゲームス、アダプテーションはGrove Street Gamesが担当。
はじめに:名作との初対面は決して甘くなかった
世界中で大ヒットを続ける「グランド・セフト・オート(GTA)」シリーズ。そんな伝説的タイトルの礎を築いたのが、今回プレイした『グランド・セフト・オートIII 決定版(Grand Theft Auto III: The Definitive Edition)』です。
私自身、17年前に発売されたオリジナル版は未プレイで、GTAシリーズそのものも今回が初体験。つまり、“懐かしさ”や“思い出補正”といったバイアスなしに、まっさらな視点から本作に触れることになりました。
しかも「決定版」という冠がついており、グラフィックや操作性の改善、ある程度の現代的アップデートが施されていると信じていたのですが――現実はそんな甘いものではありませんでした。
決定版と名乗るにはあまりにお粗末な仕上がり
最初に感じたのは、グラフィック面での違和感。確かにポリゴンやテクスチャの粗さは「昔のゲームだから仕方がない」と言えます。しかし、決定版として売り出すのであれば、単に解像度を上げた“だけ”では不十分でしょう。
とはいえ、見た目の問題にはある程度目を瞑ることができます。問題はその先です。
操作性の悪さ、ゲームの基本設計の古さ、理不尽な仕様の数々――。これらがあまりに目立ち、「プレイを楽しむ」という本質的な部分に大きく影を落としているのです。
リマスターと名乗るには配慮が足りない
決定版として提供する以上、求められるのは最新のグラフィックでも超リアルな演出でもありません。必要なのは、現代のプレイヤーがストレスなく楽しめるだけの最低限の最適化です。
しかし本作にはそれがまったく見られません。
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頻発する処理落ちとバグ
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謎のタイミングで突如発生するフリーズ
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カバーアクション非対応(ただ撃たれるのみ)
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ゲームオーバー時に装備が全ロスト
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仲間NPCのAIが壊滅的で、足を引っ張るだけ
もはや「懐かしさ」や「当時のまま」という言葉ではごまかしきれないレベル。特に初めてプレイする人にとっては、単に“出来の悪い古いゲーム”としてしか映らないのではないでしょうか。
ストーリーやキャラにも感情移入できず
ゲームの骨格であるミッション内容も非常に単調。「やくざの車を取りに行け」「ホステスを送迎しろ」といった、お使いのような展開が延々と続きます。
さらに致命的なのは、主人公が一言も喋らないという仕様。命令を押し付ける悪党たちに対して、ただ黙ってうなずき従うだけの姿は、プレイヤーとの感情的な接点すら生まれません。
キャラクターたちはいっぱしの悪党ばかりで、主人公も結局その“駒”でしかない。この構造もあって、物語としての引き込み力には欠け、プレイヤーとしては常に他人事のままです。
唯一の光明は「ほぼシームレスなオープンワールド」
ただし、完全にダメなゲームかといえば、そうではありません。舞台となるリバティーシティの構造は、当時の技術でこれを実現していたことを思えば称賛に値します。エリア移動にほとんどロードが入らない設計は、20年前にしては破格でしょう。
しかし、オープンワールドの魅力の一つである「街の生きたリアクション」や「突発的なイベント」は見当たらず、景観もグラフィックの粗さゆえに楽しめません。
今となっては、同じオープンワールドなら他にいくらでも上位互換があるのが現実です。
実際にプレイした他の人の声
私と同様に、本作に落胆したという声は多く見られます。
「決定版のはずが、決定的にダメな出来」
「リマスターにしては不親切すぎる。操作性最悪」
「懐かしさ補正がないとただの苦行」
一方、オリジナル版を当時遊んだユーザーからは、こんな声もあります。
「当時の雰囲気をそのままに楽しめた。懐かしさに浸れる」
「思い出の街を新ハードで歩けるだけで感動した」
つまり、過去のプレイヤーと新規プレイヤーで評価が大きく分かれる作品だと言えます。
総評:これは“記念碑”であって“決定版”ではない
『グランド・セフト・オートIII 決定版』は、シリーズの原点を振り返るための記念碑的な存在にはなっているかもしれません。しかし、決して「今から遊ぶのに最適なバージョン」ではありません。
グランド・セフト・オートというシリーズを一から楽しんでみたい、という方がいたとしても、まずは後年の完成度が高い作品(例:GTA V)から入ることを強くお勧めします。
まとめ
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決定版と呼ぶには、あまりに品質が不十分
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現代的なアップデートがほぼ感じられない
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新規プレイヤーにはおすすめしづらい
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懐かしむことができる人には価値があるかも
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シリーズ入門としては不向き。歴史的資料として楽しむならアリ
「これが決定版?」と、皮肉を込めてタイトルにつけたくなる、そんな一本でした。