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桐条武治により集められる一行
屋久島に到着したその日の夜。武治により全員が集められる。
そこでは、先だって美鶴には伝えていた通り、桐条家当主として、過去に起こった事故とその背景に関わる情報をすべて語るものだった。
冒頭では、タルタロスやそれに関係する事故や事件の全責任は桐条グループにあり、その責任も痛感しながら、一人で贖えるものではないことも自覚していることを語り、主人公たちへの協力を求めた。
その姿には、問題について真摯な姿勢と、責任はすべて大人の自分たちにあり、その罪から娘である美鶴を遠ざけたいという心情が伝わるものを感じた。
悲劇を招く原因となった、時を操る神器
武治によると、先代の鴻悦がシャドウ研究に没頭するきっかけは、晩年、人生における虚無感が発端となったことを説明。
それを解消するために、シャドウの研究を行い、その人知を超えた力を利用した、時を操る神器を作ることが目的だったとの事。しかし、それは人が踏み込んではいけない領域だった。結局、シャドウの力を制御できず、大惨事を生むことになった。
美鶴がゆかりに伏せたかった真実があかされる…
罪とそれを生んでしまった原因すべてを告白すると決めていた武治。
事故現場で残されていた真実を語る証拠である、ひとつの映像を見せる。
それは、事故が起こったその時、現場にいた責任者が後世に残した映像だった。
映像から流れる男性の声に、ゆかりが驚いたような反応をみせる。
そう、現場にいた研究者は、ゆかりの父だった。
ゆかりの父である岳羽詠一郎による告白
ゆかりの父である岳羽詠一郎は、当時、シャドウの研究の中心人物だった。
映像は、詠一郎の赤裸々な告白が収められていた。
研究が進む中で、先代の鴻悦が変わってしまったこと、研究の危険性を知りながら、研究者としての成功に目が眩んだこと。
そして事故が起こり、改めてシャドウの研究が過ちであったことを認める発言で締めくくられていた。
ただし、映像を見たあとに、武治は、鴻悦に見出された詠一郎も被害者の一人で、その野心にとりつかれた犠牲者だと説明し、改めて責任の所在は桐条グループにあると言及していた。
しかし、これまで信じてきた父親の知らない姿と、受け止めるには重すぎる真実に、ゆかりはショックを隠せない。
そして、そこで初めてタルタロスやシャドウの件で、誤解を受けても、真実をゆかりに隠そうとしていた美鶴の真意を知る瞬間でもあった。
だが、いまのゆかりの心境では、そうした美鶴の優しささえ、自分を惨めにさせる同情でしかなく、その場で怒りをぶつけ、飛び出ていってしまう。
美鶴は主人公にゆかりの後を追ってほしいと頼む。
ずっと、その真実を知りながらも、ゆかりを傷つけたくなかった美鶴。
本当は誰よりも追いかけたい気持ちだろうが、それは今のゆかりをまた傷つけてしまうかもしれない。
美鶴の悲しそうな表情から、そんな思いが伝わってくる。
もちろん、頼まれなくても、ゆかりをこのままにはしておけない。
ゆかりの思いを受け止める主人公
ゆかりは昼間にみんなで遊んだ浜辺にいた。
打って変わって、夜の海の静けさが、苦しみと不安で押しつぶされそうな、ゆかりの心情と合わさっているように見えた。
ゆかりは、主人公に気持ちを打ち明ける。
当時、父親が事故の責任者として報じられ、世間からバッシングを受ける状況となり、それを避けるべく、転々としたつらい過去を語り始める。
それでも、父親を信じたい思いは強く、父の死の真相を知るために、桐条グループの近くに身を置いたこと、すすんでペルソナ使いになったこと。
そうした、これまで抱えてきた父への思いや、事故の責任があるはずの桐条グループの美鶴にさえ父がいる事へ嫉妬を覚えたことも語る。
ゆかりは、思いを打ち明ける中で、心に余裕をなくし、慰める主人公に怒りをぶつける。
しかし、そうしてずっと心の奥に閉じ込めていた気持ちを吐き出したことで、少しだけ、気が晴れたような表情をみせる。
そこには、主人公も両親を亡くした身の上があり、それでも、立ち止まることなく、生きている。
だからこそ届く言葉があったのかもしれない。
気持ちを吐き出し、辛い思いと共に涙を流したことで、ゆかりの気持ちに平静さが少し戻る。
そして、普段、見せることのない姿や本音を明かしたことで、気恥ずかしい思いを作りだし、これまでにない雰囲気に飲まれてしまう。
そこに、タイミング良く(悪くか)順平がやって来て、思わず、互いに顔を背ける二人。
なんだか青春の甘酸っぱさが、ギュッと詰まった場面だ。
ペルソナ使いの代償
順平より、もう少しで影時間になるという話をされ、ふと、ゆかりが語る。
ペルソナ使いの力を持ったときから、影時間の体験により、普通に生きる人より時間と記憶を意識することになる。
それは、時に辛く、遠ざけたい記憶を忘れることが出来なくなることを意味しているのかもしれない。
すべてを吹っ切ることが出来たわけでもない。
それでも、ゆかりは自分が一人じゃないことも知ったようだ。
まだ、躊躇いや不安を抱えてはいるが、やるべき事がある。再び戦う決意を、自らに問うように口にする。
何者かの視線を感じる
ゆかり、順平が、みんなの元に戻るため浜辺から歩き出す中、ひとり立ち止まり、周囲を窺う主人公。
どうやら、終始、誰かの視線を感じていたようだ。その後、特に何も起こる様子はなかったが、油断はできない。
満月までは、まだ時間があるものの、シャドウとは別に、例の3人組のこともあり、旅行先といえど、あまり気は抜けないようだ。