小惑星の衝突により人口の8割が死亡し、人類が滅亡の一途を辿る世界。そこは血に飢えた冷酷なギャングが徘徊し、オーソリティーが圧政を目論む場所となっていた。ウェイストランド最後のレンジャーであるウォーカーは、権力に対する脅威とみなされ、住処を奪われ死の淵に立たされる。今こそ、正義と自由のために怒りをたぎらせろ。常軌を逸したマシンでの戦闘、スーパーパワーを駆使した主観視点での乱戦、狂気に満ちたオープンワールド。あなたは残忍なギャングと戦いながら苛酷なウェイストランドを駆け巡り、オーソリティーの圧政を打ち砕くために必要なツールと技術を探し求める。
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ディストピアとヒャッハーが見事に融合した作品
荒廃した世界とそれを支配する暴力と狂気。主人公であるウォーカーはそれに立ち向かうことが出来る唯一の存在で、特別な力を有するといわれるたった一人のレンジャーでもある。
プレイヤーは、ウォーカーを操作しながら世界を旅する。その道中で出会うことになるのは強烈な個性を持った者ばかりで、飽きることはない(好き嫌いは分かれそうだが)
暗黒に満ちた世界ということで、街を形成する居住区を訪れても退廃的な雰囲気が漂っている。しかし、よくよく街に住む人と接してみると、劣悪な環境の中でも生き抜こうとするそれぞれのたくましい意志が感じられる。
それもあり、絶望一色の世界を暗澹とした気持ちで旅するということがない。ときには思わず吹いてしまうようなブラックジョークがあったりと、世界観にマッチした怪しい明るさがある。
癖のある世界観は人を選ぶ部分であるが、それがディストピアを表現する上で欠かせない要素として活きている。そんな狂気に満ちた世界で、ときに敵以上の容赦なさで暴れまわる快感は本作ならではと言える。
物語だけを楽しむならボリューム不足に感じるかもしれない
本編冒頭で、ウォーカーは大切な人を目の前で奪われ、その敵を討つという目的が示され、それがゲームスタートの合図となる。そこからプレイヤーは自由な行動が許される(人によっては突然、未知の世界に放り出される感覚に襲われるかもしれない)
昨今のオープンワールドゲームでは珍しくもない形式ではあるが、本作はアクション性重視で、そのぶんRPG的要素を極力抑えた設計となっている。そのためエリアごとに厳格なレベル設定はなく、マシンに乗りながら広い荒野を駆け、その先で偶然に発見した敵拠点などを攻略していくことになる。
その自由度はかなり高く、本編に関わることになる一部の拠点を除けば、それ以外の拠点は最後まで無視して進めることもできる。ただし、重要拠点を解放することで新しい武器や、レンジャー特有のスキルを獲得していくことができるので、あまりに極端なプレイは難易度を無暗にあげることにはなる。
それでも最終的な選択はプレイヤーに委ねられた形で、武器やレンジャースキル解放に順序だったものはなく、プレイヤーそれぞれの進捗に合わせた格好。また開放していく武器やスキルに明確な序列も存在しない(性能差のみ)
極端な話、本編攻略とオープンワールドマップに占める拠点攻略はかなり切り離されている。そのため本編中心に攻略するのならプレイ時間は10時間も必要としないだろう。
私のように本編の目的をそっちのけで、武器、スキル全開放、それに加えて敵拠点攻略などを楽しめる人であれば30時間以上は遊べる。
本作における高い自由性は、遊ぶ人のプレイスタイルに多く委ねられる形なので、物語だけを満喫したいという人にはボリューム不足という印象をあたるかもしれない。一方、オープンワールドという箱庭を自分なりに遊び尽くしたいという人であれば、時間を忘れて楽しめる内容となっている。
プレイしてよかった点と気になった点
・シューターゲームとしては易しい設計で、的(敵)に当てることで苦労することはない
・アクションが苦手人でも戦闘を有利に進めることが出来るスキルラインが充実している(救済策としてチートアイテムすらある)
・途中で手に入れることが出来るロボットの操作性と挙動が堪らなく癖になるものがある(戦闘力も非常に高いので途中からロボットゲームになる場合あり)
・グロいのが苦手な人にはキツイ描写がある
・マップの広さに対して景色の変化がやや乏しい(ただし、それが荒廃した世界を表している面もあるので一概に悪いとはいえない)
・本編だけ追う人にはボリューム不足を感じさせる
シューターゲームが苦手な人でも遊べるゲーム設計
FPSによるシューターゲームとしては、決してうまくない私でもトントン拍子で進めることが出来たので比較的やさしい設計といえるのではないだろうか。本作の面白い所は操作する主人公が重火器を扱うエキスパートというだけでなく、超能力のようなスキルも使える点。
そのスキルも組み合わせながら敵拠点の制圧やボスとの戦いを攻略していく設計はプレイヤーに選択と遊びを与えてくれている。もちろん、何も考えず持ちうる武器をありったけぶっ放していくスタイルでも攻略できるので、敷居の低さによる縦の部分と、遊びの幅による横のバランスが絶妙に感じた。
限定的なシチュエーションで戦うことになるボス戦は、通常の戦闘に比べるとやや難易度の高さを感じさせることもあったが、それも戦闘をサポートするスキルラインや、ウォーカーの基本能力を底上げできる成長要素などの充実を図ることでいくらでも有利にしていくことができるようになっている。
あくまで難易度ノーマルで遊んだ感想にはなるが、戦闘場面で行き詰まるようなことはなかった。とくに拠点制圧などにおける敵のAIに限れば、近くで仲間が砲撃を受けているのに、ぼうっと空を眺めてそれに気づかないという場面をたびたび目にした。それをクスッと笑って許容できるか、怪しからんと憤りを覚えるかは、プレイヤー各自に寄るところであるが、総じて易しい難易度といえるだろう。
シューターゲームのテーマとしては余談になるが、広大なマップを移動する上で欠かせないマシンも本作の魅力を語るうえで欠かせない。
マシンは、移動手段としてだけでなくれっきとした兵器でもあり、なかにはユニークな武器を搭載したものも幾つか登場する(中には武器を搭載せず、移動手段としても使えないのもあるが…)
最初は相棒となる一台だけだが、世界を旅する中で見つけて入手していく。アップグレード(改造)できるのは最初の一台のみというのは寂しくもあるが、そこは最も付き合いの長い相棒ということでその立場を尊重してやる気持ちが必要。
特別なシチュエーションのボス戦では乗ることはが出来ないが、マップに点在する拠点攻略では大活躍してくれる。マシンが搭載する圧倒的な火力で集中砲火を浴びせ、一方的なまでの形で殲滅させることも可能。特にウォーカーの成長、装備もままならない序盤では頼りになるので、是非とも好みのマシンを見つけ、凶悪な敵を一掃する喜びを感じてほしい。
RAGE2をクリアして思うこと
ディストピアを舞台にしたオープンワールドゲームを幾つか遊んできた。その比較から語っても、たっぷり楽しませてもらった作品といえる。特に世界観を支える登場人物たちは、人を選ぶこと間違いなしという個性の強さを感じさせた(最上の誉め言葉のつもり)
2作目ということであるが、前作を知らなくても特に支障は感じなかった。それもチュートリアルを兼ねたオープニングが、その辺りをうまく補完してくれていたこともあり、すんなりと物語に入ることが出来た。
この辺の明瞭簡潔さは、オープニングから冗長を感じさせることが多い国内メーカーも見習ってほしいと思わせるほどノンストレスな設計だった。
一方で、少しもったいないと感じる部分もあった。
シームレスで展開されるオープンワールドは素晴らしいのだが、目的地や敵の拠点に移動するまでにプレイヤーを楽しませる仕掛けが殆どない。マップを移動しているなかで野良の敵と遭遇するのだが、心躍るアイテムを落とすわけでもないので、戦うメリットが少ない(成長要素に関わるアイテムは落とすが、サブクエストなどをこなす方が効率的)
武器も重要拠点を攻略することで解放していく形となっており、ハクスラ要素といえる部分が全くない。またレベル制度でもないため、敵を撃破し経験値を得るという事もなく、序盤ならまだしも中盤以降は、クエストに関係する戦闘以外はどうしても無駄足に感じてしまうところがあった。
ただ、そうしたRPG的要素を極力抑えているからこそ、序盤からプレイヤーの腕一本で広大なマップを冒険できるようになっている。そうしたアクション性を重視したともいえる設計は、サクサクと遊びたい人には打って付けではないだろうか。
多少、ストーリー(本編クエスト)が短くボリュームに欠けるところはあるが、それをカバーするだけの魅力が本作にはある。難しいことは抜きにして、広い荒野を駆けながら、ヒャッハーと暴れたいという人であれば、きっとその思いを満たしてくれるはず。