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禁酒法時代を体感できるゲーム『マフィア コンプリート・エディション』レビュー|濃厚な物語に圧倒される

投稿日:2022年5月6日 更新日:

「マフィア」クライム・サーガ第1作目の完全リメイク作品。
舞台は1930年代、イリノイ州ロスト・ヘヴン。アメリカの禁酒法時代にマフィアとして犯罪組織でのし上がっていく生きざまを描く。タクシー運転手のトミー・アンジェロは、ひょんなことからギャングのいざこざに巻き込まれ、不本意ながら犯罪組織の世界に足を踏み入れることになる。最初はサリエリ・ファミリーの一員になることに不安を感じていたが、背を向けるにはあまりに大きな報酬額だったー。

ギャング映画の世界へ:
禁酒法時代をギャングとして生き、マフィア組織の中でのし上がれ。

イリノイ州ロスト・ヘヴン:
緻密に再現された1930年代の両大戦間の建造物、車、文化を味わい尽くそう。

クラシックのリメイク:
前作を忠実に再現しながら、拡張したストーリー、ゲームプレイ、オリジナルスコアを追加。懐かしの『マフィア』がパワーアップして帰ってきた。

『マフィア コンプリート・エディション』を購入すると、『マフィアII コンプリート・エディション』および『マフィアIII コンプリート・エディション』の両方でトミーのスーツとタクシーをアンロック可能。

1本の映画を見終えたような、濃密で美しい時間を体験できる作品

2020年に発売された『マフィア コンプリート・エディション』は、2002年に登場した初代『マフィア』のフルリメイク作品です。私は今回、本作で初めてマフィアシリーズに触れたのですが、20年前の作品がベースであることを微塵も感じさせない、圧倒的な完成度と没入感に驚かされました。

舞台となるのは、禁酒法時代のアメリカ。架空の都市「ロストヘブン」を舞台に、タクシー運転手から裏社会へと足を踏み入れていく男トミー・アンジェロの数奇な運命を描いたストーリーが展開されます。

圧倒的な没入感をもたらす街の情景と物語構成

まず特筆したいのは、その街並みの再現度と雰囲気の作り込み。1930年代のアメリカが持つ独特の空気感を見事に再現しており、まるで映画のセットの中を歩いているかのような錯覚に陥ります。タバコの煙が立ち込める酒場、石畳の道路、クラシックカーのエンジン音、すべてがリアリティを持って描かれており、時には操作を止めてただ風景に見入ってしまうほどでした。

そして物語もまた、非常に濃密。序盤から終盤までテンポよく展開し、中弛みすることなく、プレイヤーをグイグイと引き込んでいきます。どこかで見たような王道の流れではあるものの、その王道をしっかりと丁寧に描き切っており、ラストでは思わず胸が熱くなるような余韻が残ります。

まさに「映画を操作する」という表現がぴったりの構成で、物語を追う楽しさにどっぷり浸かることができました。

アクション性に期待すると肩透かしかもしれない

一方で、アクションゲームとして本作を見た場合、評価はやや変わってきます。銃撃戦やカーチェイスはしっかりと用意されているものの、あくまで物語の中で必要最低限の要素として組み込まれている印象です。

ド派手なエフェクトや、スキルの成長要素、自由度の高い攻略方法といった「現代的なゲーム的楽しさ」は抑えられており、どちらかというと映画的な演出を優先したデザインになっています。

例えば、銃撃戦ではプレイヤーの手応えよりも、キャラクターたちの動きや状況の緊張感を演出することが重視されており、ゲームとしての爽快感はやや控えめ。また、武器や装備の収集要素もほとんどなく、リプレイ性はそれほど高くありません。

そのため、「マフィア」というキーワードから、ドンパチ重視の派手なアクションゲームを期待してプレイすると、物足りなさを感じるかもしれません。

ゲームというより"マフィア映画を操作する体験"

本作を最後まで遊んで感じたのは、「これはゲームという形をとったマフィア映画なのだ」ということでした。アクションパートは、物語を進めるために必要な最小限の"操作部分"であり、自由度を与えるというよりは、あくまで演出の一環として存在しているようにも思えます。

そのため、ゲーム性を重視する方や、自由な攻略、キャラの成長要素などを求める方には、正直強くはオススメできません。けれども、物語の深さや世界観、時代背景の表現に魅了されるタイプのプレイヤーには、これ以上ない体験を提供してくれる作品です。

良かった点:プレイヤーを1930年代に連れて行く没入感

◆ 禁酒法時代の空気を五感で感じる

本作最大の魅力は、何と言っても1930年代アメリカの街並みや文化、社会情勢をリアルに体感できる点です。まるで古き良きアメリカ映画を見ているかのような雰囲気の中、クラシックカーを運転し、酒場のざわめきやラジオの音を耳にしながら街を走る瞬間は、タイムスリップしたような感覚に包まれます。

◆ 映画のように重厚なストーリー

一人の男が闇社会に足を踏み入れ、上り詰め、そして堕ちていく――本作のストーリー展開は、まさに一本の映画のよう。中だるみなく進行する各ミッションが、トミー・アンジェロという男の生き様を丁寧に描いており、プレイヤー自身が彼の人生を体験しているような錯覚にすら陥ります。

◆ ダークヒーローではなく、人間臭いマフィア像

本作が秀逸なのは、マフィアを決して「格好良く」描いていないことです。暴力や裏切りが支配する世界の中で、トミーが何を守り、何を捨てていったのか――そこには哀しみと矛盾、そして人間らしさがあります。ある仕事の後に妻サラと交わす会話は、マフィアとしての生き方に対する苦悩を浮かび上がらせ、この作品がいかにリアルで、誠実な視点から描かれているかを物語っています。

◆ 一話完結型でテンポが良く、少しずつ遊びたい人にも最適

物語は章立て形式で進行しており、各ミッションがしっかりと区切られているため、1話ずつじっくり進められます。まとまった時間が取れない人でも、少しずつ進めていくスタイルで楽しめる構成になっているのは好印象でした。

気になった点:ゲーム性を求める人には物足りない部分も

◆ 銃撃戦がもっさり気味で武器の種類も少ない

戦闘パートに関しては、操作性にクセがあり、スピーディで爽快なアクションを期待すると肩透かしを食う可能性があります。また、武器の種類も限られており、自由度の高い戦闘スタイルが楽しめるというよりは、あくまで演出に沿って行動する印象でした。

◆ ミッションの一つ「レース」が難易度高め

中盤に登場するレースミッションは、思いのほか難しく、何度も失敗してしまう人も多いと思います。私の場合、偶然にも先行車がクラッシュしてくれたことで辛くも突破できましたが、ここで詰まるプレイヤーは少なくないでしょう。

◆ やりこみ要素やボリュームは控えめ

ゲームとしての広がり、例えば成長要素や収集要素といった「やり込み」部分はほとんどありません。また、メインストーリーもそれほど長くはないため、がっつり遊び込みたいタイプのプレイヤーには少し物足りなく感じられるかもしれません。

トミーの視点で描かれる「二つの家族」とその選択

物語は、タクシー運転手だったトミーが偶然をきっかけにマフィアに関わり、そのまま裏社会へと足を踏み入れることから始まります。最初はただの巻き込まれでしたが、次第にマフィアの掟と生き方に染まり、仲間からも信頼されるようになり、さらには家族を持つまでに至ります。

彼の人生には、二つの「ファミリー」がありました。
ひとつはマフィアとしての家族、そしてもうひとつは妻サラと築いた家庭。
トミーはその両方を守ろうと奮闘しますが、やがてその二つが衝突する日が訪れます。

そしてトミーが選んだのは、自分の“本当の家族”を守るため、もう一方を裏切るという苦渋の決断でした。

ラストシーンが語る、マフィアの真実と静かな余韻

物語の終盤、トミーが語る「家族は永遠だ」という一言は、重く、そして深い意味を持っています。家族とは何か? 誰と生きるべきだったのか? 彼の選択は正しかったのか――そんな問いが、プレイヤーの心に残ります。

マフィア映画でよくある「美しくも哀しい結末」を、ゲームという形でしっかりと描き切った本作。そのラストに至るまでの道のりがあるからこそ、トミーの言葉が胸に響くのです。

総評:映画的体験を求めるなら、間違いなく刺さる一本

『マフィア コンプリート・エディション』は、ゲームというよりも、インタラクティブな映画に近い体験を提供してくれる作品です。
アクション性ややりこみ要素を重視する人には向かない部分もありますが、「物語を体験するゲーム」としては極めて高い完成度を誇ります。

リアルで、哀しくて、そして美しい――そんな物語に浸りたい方には、自信を持っておすすめできる一作です。

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