ここは、何度目かの黄昏を迎え、徐々に終わりの時を迎えつつある世界。
その世界に存在する、「黄昏の大地」の遥か西方にある、かつて錬金術で反映した国家が存在した地方。
そこでは、いつか訪れる「黄昏の終わり」の到来を回避するため、人々は失われた錬金術の技術の発見と再生に力を注いでいた。
再生された前時代の技術は、「中央」と呼ばれる錬金術の研究都市に結集され、進行する黄昏を阻止するための利用方法が研究されている。
主人公は、中央から配属された錬金術を研究している青年と、この辺境の小さな街に暮らしている少女の二人。少女の名はエスカ。
人々の役に立ちたくて自前の古い錬金術の知識を使い頑張っているうちに、開発班に配属されることになった。青年の名はロジー。
中央で最新の錬金術を学んでいた彼は、その力を役立てるために人手不足の地方の街への転属を願い、配属先の開発班でエスカと出会うことになる。二人は協力して錬金術の力を駆使し開発班をもり立てていこうと約束する。
【シリーズ初のダブル主人公制を採用した意欲作】
ガストが贈るアトリエシリーズの中でも、独特の「終末感」と幻想的な世界観を特徴とする“黄昏シリーズ”。その第2作にあたる『エスカ&ロジーのアトリエ ~黄昏の空の錬金術士~』をプレイし終えて、改めて感じた本作の魅力や、前作『アーシャのアトリエ』からの進化について、じっくり語っていきたいと思います。
シリーズ初の「ダブル主人公」システムがもたらす新鮮さ
まず、本作の最大の特徴として挙げたいのが、アトリエシリーズ初となる「ダブル主人公制」の採用です。これまでは女性キャラクターが主人公として固定されていましたが、今回は元気いっぱいの女の子・エスカと、ちょっと理屈っぽくて落ち着いた雰囲気の青年・ロジーという、まったく異なる性格を持つ2人が主人公を務めています。
選んだ主人公によって、描かれる物語の視点が異なります。大筋のストーリー展開に大きな違いはないものの、キャラクター同士の関係性や会話、ちょっとしたイベントの演出がそれぞれ異なり、2周目のプレイにも十分な価値があります。
特に長らく女性主人公が続いてきたシリーズにおいて、男性主人公の登場は非常に新鮮で、これまでアトリエにあまり触れてこなかった男性プレイヤーにとっても入りやすい作品だったのではないでしょうか。
さて、ここからは本作ならではの魅力を語っていこう。
まず、アトリエシリーズ初となるダブル主人公制を採用し、エスカ、ロジーによる2通りの物語を楽しむことが出来る仕様となっている。ただし大筋の内容は変わらない。あくまで、それを各自の視点で描かれるものという程度で、全く違った物語が楽しめるという深みはなかった。
それでも長い間、女性主人公に固定されてきた経緯を考えれば、新しい試みとも受け取れ、初となる男性主人公による物語を楽しむことができた。
新たな試みと言えば、これまで制限があるとはいえ相当な量をもつことができた戦闘用アイテムも一新され、探索装備という枠で管理するシステムになった。最初は、制限をかけることで、戦闘におけるハードルを上げるだけの容赦ない仕様に思えたが、従来の使い切りと違い、アトリエ(拠点)に戻ればすべての使用回数が補充されるという仕組みになっており、当初の印象とはがらりと変わり、かなり便利なシステムに感じた。
もう一つ注目した新しい試みは、6人によるパーティ制となったことだ。前衛と後衛の概念が誕生したことで戦略性が向上。これにより連携プレーで大ダメージを与えることが出来るなど、爽快感あるバトルを楽しめた。
黄昏シリーズとしての繋がりも健在
本作は『アーシャのアトリエ』と同じ世界観を共有しており、前作の登場人物であるウィルベルやリンカ、アーシャの妹・ミオといったキャラクターたちが登場します。アーシャ本人の登場はありませんが、彼女の“その後”を垣間見るような描写がちりばめられており、前作をプレイしたファンにとっては思わずニヤリとできるシーンが満載です。
黄昏シリーズならではの、徐々に衰退していく文明、失われていく技術、そしてその再生を目指す人々の営み――そうした重層的なテーマが、本作でも丁寧に描かれており、単なる日常系に留まらない、深みある物語体験を味わえます。
バトルシステムの進化 ― 爽快感と戦略性が両立
戦闘面においても、本作では新たな試みが数多く導入されています。特に大きな変化として挙げられるのが、最大6人編成のパーティ制の採用です。前衛・後衛の概念が加わったことで、これまで以上に戦略的なバトル展開が可能となり、連携技やサポートによる大ダメージなど、爽快感のある演出が光ります。
また、戦闘アイテムの扱いも見直され、従来の「使い切り」スタイルから、探索装備という形で管理されるようになりました。一見すると制限が厳しくなったように思えるのですが、実際には拠点へ戻ることで回数が補充されるなど、遊びやすさが大幅に向上。戦略を立てて戦闘に臨む楽しさが、さらに深まった印象です。
調合システムはより直感的に、そして奥深く
シリーズの代名詞とも言える「調合」システムは、本作でも健在。むしろ、前作と比べてより分かりやすく、直感的に操作できるようになったことで、初めて触れる人にも優しい設計になっていると感じました。
しかし、それでいて奥が浅くなったわけではありません。一部の高難易度アイテムを極めようとすれば、スキルや素材の選定に頭を悩ませること必至で、試行錯誤の末に理想の一品を生み出す達成感は、まさにアトリエシリーズならではの醍醐味です。
■ 良かった点
● 前作キャラの再登場が嬉しい
『アーシャのアトリエ』に登場したキャラクターたち――ウィルベルやリンカ、ミオといった面々が引き続き登場。彼女たちの「その後」を感じられる場面もあり、前作プレイヤーには嬉しい演出となっています。
● 幻想的な世界観と音楽の魅力は健在
薄暗くも美しい空と大地、文明の衰退を思わせる建造物、そしてそれにマッチした幻想的なBGM。アトリエシリーズの中でも特に「空気感」の完成度が高く、没入感の高い作品に仕上がっています。
● ダブル主人公制が周回プレイを楽しくする
シリーズ初の試みとして、エスカとロジーの2人の主人公を選べる仕様に。物語の本筋に大きな変化はないものの、視点や会話の違いで細かな発見があり、2周目でも楽しめる工夫が感じられました。
● 初心者にやさしい設計
調合・採取・戦闘といったシステム面も洗練され、初めてアトリエに触れるプレイヤーでも入りやすいバランスに。スケジュール制も比較的余裕があり、焦らずマイペースに進められるのも魅力。
■ 気になった点
● DLCへの依存
前作の主要キャラであるマリオンやハリーなどが本作ではダウンロードコンテンツ(DLC)扱いとなっており、すべてのキャラを使いたい人には物足りなさを感じる部分も。
● 錬金アイテムが強すぎて仲間が霞む
エスカとロジーの作る錬金アイテムが強力すぎて、仲間キャラの必殺技やスキルの存在感が薄れがち。バトルにおける役割のバランスに少し課題を感じる場面もありました。
● ダブル主人公の“物語差”がやや薄い
視点が違うだけで物語の展開自体はほぼ同じ。せっかくのダブル主人公制なのだから、パートナーとしての絆や分岐エピソードなど、もっと深堀りされた描写があっても良かったという印象。
■ プレイして感じた“明るさ”と“前向きさ”
黄昏シリーズというと、どうしても終末感や寂しさ、時に悲壮感のある描写が印象に残りがちですが、本作に関してはそのトーンが少し柔らかくなっています。エスカもロジーも、それぞれ辛い過去や課題を抱えつつも、お互いに支え合い、前を向いて進んでいく。その姿はとても爽やかで、物語全体に希望を感じさせてくれました。
■ 本作からでも楽しめる親切設計
黄昏シリーズ2作目ではあるものの、前作の内容を知らなくても楽しめるように、物語やキャラクターの説明も丁寧に設計されています。逆に、前作を知っていればより深く楽しめるという“加点方式”で設計されており、シリーズの途中作にありがちな“置いてけぼり感”は一切ありませんでした。
■ RPGとしての独自性と時代を感じさせない完成度
アトリエシリーズは毎回、戦闘や調合などのシステムに変化を加え、作品ごとの個性を大切にしてきました。本作も例外ではなく、6人パーティ制の導入や探索装備による新しいアイテム管理など、手堅いアップデートが行われています。
10年以上前の作品であるにもかかわらず、今プレイしても古さを感じさせない完成度の高さはさすがです。
■ 実際にプレイした人の評価(一部抜粋)
「黄昏シリーズの中でも一番プレイしやすいと思った。明るい雰囲気が良かったし、エスカの笑顔に癒された」
「周回前提なのに、主人公ごとの物語に差がないのは少し残念。でも戦闘は連携プレイが楽しくて爽快!」
「エスカとロジーの距離感が絶妙で、恋愛感情ではないけど、強い絆を感じられて好き」
■ まとめ:シリーズ経験者にも初見にも勧めたい“安心の良作”
『エスカ&ロジーのアトリエ』は、シリーズにとって新たな一歩を踏み出した作品でありながら、アトリエらしい柔らかさや調合の奥深さも損なっていない、極めてバランスの取れた良作でした。派手さはないものの、丁寧に作られたことが伝わってくる作品です。
アトリエシリーズをずっと追っている人にも、RPGを探している初心者にも安心しておすすめできる一作です。