1年前、アスディバインの地を不自然な閃光が埋め尽くしました。
それ以来、闇の力が徐々に強まっています。
何かの異変に違いありませんが、人々はまだ気づいていません。ひるがえって現在。
王都グーテンベルクへの出立を明日に控えた少年と少女に、
驚くべき出会いが待っていました。「ワシは光の精霊神じゃ!世界は危機に瀕しておる!
お主ら、力を貸せい!」突然そんなふんなことを(とてもえらそうに)喋りだしたのは、
一匹の・・・・・・子猫?
その言い分を全く信じない少年・ソルと少女・ステラでしたが、
言うまでもなく、この出会いが、彼らの運命を変えてしまうのでした。
RPGの王道と2Dの魅力を詰め込んだ、珠玉の作品
ケムコが手がける低価格帯RPGということで、「軽めの内容でサクッと遊べるだろう」とタカをくくっていた筆者。しかし、実際にプレイしてみると、その予想は心地よく裏切られることに。
本作『アスディバインハーツ』は、2Dグラフィックの懐かしさと現代的な快適性を融合させた、じっくり腰を据えて楽しめる本格RPG。ボリュームは控えめどころか、本編クリアまでに20時間以上。さらに、エンディング後には“真のボス”との激闘や追加コンテンツが解放され、最終的なプレイ時間は40時間超えという大ボリュームに。
この一本に、RPGの面白さややり込み要素がこれでもかと凝縮されており、プレイ後は「これは紛れもない傑作だ」と胸を張って言える内容だった。
王道ストーリーに光るキャラクターの魅力
物語は古き良きRPGらしい王道展開を軸に進行しますが、何より魅力的なのが主人公ソルとその仲間たちの会話劇。
ソルはぶっきらぼうな一面を見せつつも、仲間を大切に思う優しさを持つ好青年。見た目も中身も“イイ男”で、思わず感情移入してしまうほど。そんな彼のまわりには、孤児院で育った幼なじみ、どこか影のあるヒロイン、まじめ一筋なツンデレ系など、個性豊かな女性キャラクターたちが集まります。おまけに猫型のマスコットキャラ(?)も同行し、にぎやかなパーティー構成に。
一見すると“ハーレムもの”的な構図にも見えますが、ソル自身が全員を対等な仲間として扱い、過度に甘い描写がないため、硬派なプレイヤーでも不快感なく物語に没入できます。
とはいえ、好感度によってエンディングが変わるマルチエンディング仕様なので、「恋愛要素は一切不要」と考えるプレイヤーには合わないかもしれません。ただ、いわゆる“ご都合主義”的な展開は少なく、恋愛描写も控えめで自然な範囲にとどめられており、逆に好感が持てました。
グラフィックと操作性の快適さ
2Dドット絵ベースのグラフィックは、どこかスーパーファミコン時代を彷彿とさせる懐かしい質感。しかし、見た目はレトロでも、中身は洗練そのもの。
UI(ユーザーインターフェース)やメニュー周りは非常に見やすく、操作も快適。戦闘テンポやセーブ・ロードのスムーズさなど、現代のプレイヤーでもストレスを感じにくい仕様となっています。
キャラクターはフィールド上でも戦闘中でもよく動き、技使用時のエフェクトや細かいアニメーションも丁寧に作り込まれていて、見ているだけでも楽しくなる演出が満載。
RPGの醍醐味をしっかり押さえた育成&やり込み要素
育成面でも完成度が高く、物理スキル・魔法スキル・超必殺技といった多彩なバトルアクションが用意されています。加えて、「ジュエル」と呼ばれる成長素材を組み合わせることで、ステータスや特殊効果を自由にカスタマイズ可能。
このジュエルは敵からのドロップや宝箱などで入手可能なうえ、合成で強化もできるため、自分だけのビルドを組む楽しさがあります。
また、特定の強敵を倒すことで手に入るポイントを使って、攻略を助ける便利アイテムなどと交換できる要素も。これは任意の要素なので、縛りプレイ派にも優しい設計です。
プレイして良かった点と、少し気になった点
良かった点
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価格以上のボリュームと密度
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愛嬌たっぷりの2Dキャラクターがよく動く
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仲間たちの掛け合いが楽しく、自然と愛着が湧く
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ジュエルシステムによる自由な育成要素
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やり込みがいのある裏ボスや強化要素
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耳に残るBGMが多く、音楽面も印象的
気になった点
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移動魔法がないため、ダンジョン脱出や戻り移動がやや不便(移動速度が速いことである程度カバー)
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序盤と終盤での育成難易度のギャップが大きめ
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レベル上げによって戦闘バランスが崩れ、一気にヌルゲー化する可能性あり(これは好みによる)
シリーズ未経験でも問題なし。けれど、続編にも期待大!
物語はしっかりとした結末を迎え、プレイヤーとしても達成感を味わえる作りです。しかし、筆者はプレイ後すぐに「このキャラクターたちの物語をもっと見たい」と思いました。調べたところ、実際に本作には続編も存在しており、さっそくプレイ候補に。
懐かしさと新しさを両立させた『アスディバインハーツ』は、RPGファンならぜひ一度体験してほしい名作です。