「マフィア」クライム・サーガ第1作目の完全リメイク作品。
舞台は1930年代、イリノイ州ロスト・ヘヴン。アメリカの禁酒法時代にマフィアとして犯罪組織でのし上がっていく生きざまを描く。タクシー運転手のトミー・アンジェロは、ひょんなことからギャングのいざこざに巻き込まれ、不本意ながら犯罪組織の世界に足を踏み入れることになる。最初はサリエリ・ファミリーの一員になることに不安を感じていたが、背を向けるにはあまりに大きな報酬額だったー。ギャング映画の世界へ:
禁酒法時代をギャングとして生き、マフィア組織の中でのし上がれ。イリノイ州ロスト・ヘヴン:
緻密に再現された1930年代の両大戦間の建造物、車、文化を味わい尽くそう。クラシックのリメイク:
前作を忠実に再現しながら、拡張したストーリー、ゲームプレイ、オリジナルスコアを追加。懐かしの『マフィア』がパワーアップして帰ってきた。『マフィア コンプリート・エディション』を購入すると、『マフィアII コンプリート・エディション』および『マフィアIII コンプリート・エディション』の両方でトミーのスーツとタクシーをアンロック可能。
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1本の映画を見たような構成がもたらす没入感
本作は、約20年前に発売された第1作目をリメイクした作品ということだが、私は、今回、マフィアシリーズを初めて遊んだのでオリジナルとの比較はできない。ただ、現在リリースされているゲームと比べても、違和感なく遊ぶことが出来た。なにより、1930年代のアメリカを描いた街並みには、いっとき操作をすることも忘れ、その景色と魅力に吸い込まれた。
そんな雰囲気のある街並みを舞台にして描かれるマフィアの物語は、もはや1本の上質な映画にも匹敵し、中弛みすることなく、ラストシーンまで魅せてくれた。
思い切りアクションゲームを楽しみたい人にはおススメしない
純粋にアクション性を楽しむゲームとして評価するときには、賞賛した物語とは異なり、やや単調で面白味が掛けるという評価になるのも本作の特徴と言えるかもしれいない。
本作は、禁酒法時代のマフィアを濃密かつリアリティ溢れるものとして作られている。そのため、他のゲームで見られるようなド派手なアクションシーンや、超人的な活躍は、作り上げた世界観を壊す懸念要素でしかなく、ご法度ともいえる。
それもあり、アクションパートで用意されている銃撃戦やカーチェイスもそれほど盛り上がるものではなく、成長要素や武器を収集するといった遊びの部分もない。いかに本作が、ゲーム性よりも映画を意識した作品であることが伝わる。そのクオリティと世界観を維持する上で、プレイヤーは、やや単調で退屈なアクションゲームに付き合うことを求められる仕様になっている。
やや、身も蓋もない言い方となってしまったが、本作に対して、マフィアの設定を下地にしながら、爽快感あるアクションゲームを求める人もいるかと思われるので、敢えて強い表現をさせたもらった。
なにより、最後まで遊んだ感想としてもったのが、マフィア映画をゲームで表現したかったのだろうという印象だった。ゲームである以上、プレイヤーに操作して進めてもらう必要性があり、その為にだけに作られたアクションパートという感じが拭えなかった。
そうしたこともあり、個人的にはそれでも面白かったが、純粋にアクション性を帯びたゲームを求める人には、強くはおススメしない。
良かった点と気になった点
・禁酒法時代を満喫できる
・作りこまれたクラシカルな街並みをドライブできる
・映画のような重厚な物語性を楽しめる
・マフィアをダークヒーローとして描いておらず、生々しく活写している
・話(ミッション)が区切られているので、少しずつ遊びたい人に最適
・ミッションの一つであるレースがかなり難しい(自身の場合、運よく先行車がクラッシュしてくれたから乗り切れたが)
・銃器、武器の種類が少ない
・銃撃戦がもっさりとしている
・やりこみ部分が皆無
・全体的にボリュームが少ない
トミーの視点を通して描かれるマフィアの興亡と陰影
物語は闇社会とは無縁のタクシー運転手であるトミーが偶然をきっかけにマフィアに身を投じていくところから始まる。最初は小さな抗争を前にしても臆病さが顔を覗かせ、仲間たちにフォローしてもらうなど、生来より凶暴性をもった人間でないことが分かる。
それでも、必死に徐々にマフィアの生き様、掟を身につけていき、いつしかボスからも一目置かれる存在にまでなる。その過程で、長く闇社会に身を置いた父を持つサラと恋に落ち、家庭も築く。トミーがマフィアとして生きる中で、人生の絶頂と言っても良い。
だが、そうした時間はいつまでも続かない。これまで組織のために身を粉にして働いてきたトミー。そして、ともに助け合ってきた仲間たちの関係性に綻びが見え始める。
後半の物語は、トミーの成長、立身を中心に描いた前半とは打って変わり、マフィアの陰影と興亡が色濃く描かれている。本作の物語性が秀逸であると感じるのは、決してマフィアをダークヒーローのようには描いていない点である。それはトミーが関わることになったある仕事の後に、愛する妻とした会話シーンでも見ることが出来る。物語を最後まで見届けると、本作がいかにシビアな目線をもって物語をリードしていることが分かり、本当にマフィアの世界を覗き込んだような気持ちにさせられる。そんなゲームは中々ないだろう。
家族は永遠だ。
トミーがラストシーンで口にするこの言葉が胸に突き刺さる。トミーにとって、マフィアという組織もファミリーだったはずである。そしてサラと共に築き上げた心から愛する家族。トミーの人生には2つのファミリーがあり、それらが上手く調和を取れている時期もあった。しかし、取り巻く環境が変化し、一つのファミリーを守るために、もう一つのファミリーを裏切ることになってしまう。
トミーの選択によって、ファミリーの幸せを守られ、もう一つのファミリーが破滅を迎える。
そうして迎える物語のラストシーンもマフィアらしい締め括り方となっている。