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クリアして率直に思ったこと
物語、ペルソナや主人公たちの育成、そして本作独自のコミュシステムなど、それらを余すことなく遊ぼうとすると、かなり膨大な時間を要する。
一応、ストーリーはクリアしたが、ペルソナをすべて収集するには至っていないし、コミュ達成も一部のみなど、まだまだ遊べる余地を残した状態でのゲームクリアとなった。
それでも、プレイ時間は100時間を超えていたので、かなり遊ばせてもらったゲームと言える。
ストーリーの評価は後に譲るとして、RPGとしては10年以上前の作品という事だが、今のゲームと比べてもかなり楽しめたし、作風にも古臭さを感じさせなかった。それほど、完成度も高く、洗練されたゲームデザインとなっていた。
特に、BGM部分に歌を採用している点などは、単調なレベル上げをしている時にも、音楽に耳を傾けながら楽しむことが出来て、最終的にはiTunesで購入してしまうほどはまった(笑)
アトラスゲームの中には鬼のような難易度を誇るゲームもあるが、本作はしっかりレベルを上げ、高レベルのペルソナを作り出していけば、ストーリークリアまでは、それほど難しくない。
一方、やりこみ型の人も満足させるゲーム設計や、隠しボスなども用意されているので、単調さも感じさせなかった。
何より、本作の醍醐味であるペルソナ合体にはまっていくと、恐ろしいほどの時間泥棒に変身する要素もあるので、やりこみや周回プレイもたっぷり楽しめる。
RPGは、そうしたコツコツやちまちまとした作業に喜びを見出せる人が好むジャンルだと思っているので、本作はそういった人にも十分こたえてくれるゲームである。
それでいて、ポップなキャラクターや、おしゃれな音楽なども合わさり、独自性の強いゲーム性を確立しているので、いま遊んでも、新鮮な気持ちで楽しむことが出来る。
今も評価の高いRPGとして挙げられるが、個人的にもは、文句なしの名作だった。
異色ともいえる会話パート中心のRPG
主人公が学生であり、学園や近隣の街を舞台に物語が進む作りとなっており、全編通して、そうした中で生まれる交流部分に焦点をあてている。
その為か、これまで遊んできたRPGの中でも、会話パートが重要性を占めるとともに、ゲーム進行でも深く関わってくる作りとなっている。
定期的に臨むことになるボス戦でも、従来のRPGであれば、フィールドを移動しながらボスの拠点に向かう事が普通となっている。
しかし本作は、会話パートから始まり、自動的にボス戦まで進行してくれることも少なくない。
たまに移動をすることもあるが、ダンジョンを探索するような複雑さはなく、一方通行を進み、3,4回の小さな戦闘をして、ボス戦に突入というぐらいのものがあるだけだ。
この点は、ボス戦に挑むまでの緊張感が足りないと取るべきか、無駄な消耗戦を強いられるストレスからの解放と捉えるかは、プレイヤーの判断によるところだろう。
個人的には、自動生成ダンジョンのタルタロスがあるので、ボス戦にまで似たようなものは必要ないと遊びながら感じたので、この仕様は悪くないと思った。
何より、ボス戦までの緊張感は、会話パートが上手く演出してくれていたので、物足りなさは感じなった。
日常シーンから、本作の目的であるシャドウ討伐、全てにおいて会話パートが濃密に展開され、それらを目や耳で楽しむことが出来た。
会話により、それぞれの個性や性格、はては意外な一面や驚くべき過去なども知ることが出来て、キャラクターの深堀りの一助ともなっている。
また全編フルボイスという訳ではないのだが、名のないキャラクターでもボイス付きであったりと、かなり力の入れようは感じた。
コミュとペルソナの密接な関係
前述でも触れたように、本作は人との繫がりや絆を大切にしており、それが戦闘でのメインとなるペルソナにも深い結びつきをもっている。
そのため、コミュ対象となる人物との関りを深めていくことで、通常では入手できないペルソナを獲得することが出来るシステムとなっており、それがコミュを深めていくモチベーションの一つにもなる。
逆に、純粋に悪魔合体や育成だけを楽しみたいという人には、その一部を紐づけているコミュシステムは厄介に映るかもしれない。
基本、コミュシステムはそれほど難解なものではなく、それぞれの事情や性格に沿った選択をしていき好感度を上げていくだけのものだ。
しかし、ペルソナ3は限られた時間や行動制限があるので、全てのキャラクターのコミュを達成しようとすると、途端に高レベルなスケジューリング能力が求められ、頭が禿げるほどの緻密さを必要とされる(笑)
そのため、無事にクリアすることは出来たが、コミュに関しては、途中で断念したものや、発生自体できなかったケースなどを残す事となった。
まぁ、そうした点も含めて周回プレイ前提で作られているのかもしれない。
(周回プレイ用に一部の引継ぎが認められており、初回よりはコミュを有利に進めることが出来るようになっている)
昔ながらのRPG好きも楽しめる?
ポップなキャラクターデザインや、お洒落な音楽。さらにジュブナイルRPGというジャンル。
そうした作品ならではの魅力ともいえる点が、RPGには勇者やドラゴンが欠かせないという人には、受け付けないという考えを生むのも致し方ないかもしれない。
しかし、RPGの最大の魅力は、冒頭でも既述したように繰り返しの作業を苦にせず、自身の分身と言えるキャラクタ-の育成こそ醍醐味と考えれば、ペルソナ3は、最近のライトを売りにしたRPGよりはるかに、どっしりと腰を据えながら、楽しめる要素が盛り沢山だ。
それも、刻一刻と流れゆく時間の中で行わなければいけない事での緊張感(ときに焦燥感)も加わり、ダラダラとしたプレイになりにくい点も評価したい。
死を不幸と捉えるかと言うエンディングについて
さて、本作をプレイし終えて、やはり語らずにはいられないのが、その結末だろう。
まぁ、過去にアトラスのゲームをプレイしている人と、初めて遊んだ人では、ショッキングの度合いは違うと思う。またゲームや映画はハッピーエンドで迎えたいという人もいるだろう。
私もあからさまなバッドエンドや、小難しい解釈を必要とするエンディングは苦手である。
しかし、ペルソナ3の迎えたエンディングは、物語を通じて語られる生と死。そして人生には必ず始まりと終わりがある事をテーマとした作品と理解すれば、それほど理不尽なものには映らなかった。
もちろん、人の欲には限りがないものもあり、再び皆と共に時間を過ごしてほしいという希望や願望を抱いたのも本音だ。
それでも、主人公の選択をただの犠牲と捉えるか、彼自身の選んだ望みと思うか、死だけが突きつけることが出来る、生きる事の意味と命の大切さを、青春真っ盛りな少年少女の物語に落とし込んだ本作は、どのRPGにもない異彩を放っていることは間違いない。
総評
まだまだ、遊び足りない、または余地を残しての総評となるが、それでも十分に本作の魅力に触れることが出来たという自負もあるので思いを綴らせていただく。
本作のジュブナイル的要素をふんだんに含んだ部分が、正統派RPGをこなよく愛する層から、毛嫌いする人を生むことは理解するが、それでもプレイしてみれば、老舗ゲームメーカーが送り出した名作RPGであることがすぐに伝わる内容と魅力がペルソナ3にはある。
癖のあるシステムやゲームデザインも、遊べば遊ぶほど、愛着あるものへと変わるものがあり、決して一部のコアな層に楽しんでもらうために作られていないことが分かる。
ただ、近年のRPGに比べてもボリュームがあるので、じっくりと時間をかけて遊ぶ覚悟は必要かもしれない。
だが、その対価として、それ以上の満足感と、本作だけでしか味わえない魅力を楽しむことが出来るかもしれない。