革命の熱が渦巻く街、かつてない没入感で描かれるパリの魅力
『アサシンクリード ユニティ』は、シリーズの中でも異彩を放つ作品として知られています。本作は、シリーズ初となるPlayStation 4でのナンバリングタイトルということもあり、グラフィック面では飛躍的な進化を遂げています。
舞台はフランス革命まっただ中のパリ。貴族と平民の対立、血が流れる革命の渦中にあっても、街はどこか華やかさを残し、人々の暮らしには活気が宿っています。美麗な建築物、細部まで作り込まれた市街地、賑わう群衆など、どこを切り取っても"生きているパリ"が感じられるのです。
その臨場感たるや、あまりにリアルで、気づけばミッションの進行そっちのけで街の探索に没頭してしまうこともしばしば。プレイヤーはまさに、革命のただ中に生きる一人の人間として、パリの空気を肌で感じることになるでしょう。
操作性も過去最高クラスに進化!パルクールが爽快すぎる
本作のもう一つの魅力は、快適な操作性にあります。アサシンクリードシリーズといえば、やはり"パルクール"アクションが代名詞。その点においても『ユニティ』は大幅な進化を遂げています。
特に、上下移動の操作がより直感的になり、壁の上り下りや屋根の移動といったアクションが格段にやりやすくなっています。追跡や逃走といった緊張感あるシーンでも、思い通りに移動できるので、これまでストレスを感じていた人でも、本作ではスムーズにプレイが楽しめるはずです。
「敵から逃げるのが難しくて…」と過去作を敬遠していた人も、ぜひ『ユニティ』には再挑戦してみてほしいと思えるほど、動きの自由度と快適さは別格です。
RPG色が強くなった新システム。進化と引き換えにしたものも…
『ユニティ』ではこれまでのアクションゲーム要素に加え、RPG的な成長システムも大きく取り入れられています。装備品やスキルの取得・強化といった要素が追加され、キャラクター育成の幅が広がりました。
これにより、プレイヤーの腕前だけでなく、選んだ装備やスキル構成が戦闘の勝敗を大きく左右するように。強力な敵に対しては、しっかりと装備を整えることが求められるため、計画的なプレイが重要になっています。
ただ、その一方で「以前なら最初から使えたアクションが、スキルポイントを振らないと使えない」といった不便さも感じることがあり、プレイヤーによっては戸惑う点かもしれません。これは、ゲームとしての進化であると同時に、これまでのプレイスタイルからの大きな転換点とも言えるでしょう。
また、過去作ではある程度ごり押しの「無双プレイ」も可能でしたが、本作ではそれが通用しにくくなっています。ですがその反面、暗殺という本来のスタイルが重要視され、ステルスプレイの楽しさが再評価される作品となっています。
課金要素は?無課金でも楽しめるバランス
『ユニティ』が発売された当時、一部で話題となったのが"課金要素の導入"でした。ゲーム内で使える強力な装備をリアルマネーで購入できる仕組みが追加され、「序盤から最強装備が手に入る」とも言われました。
しかし、実際にプレイしてみると、その印象はやや誤解を含んでいると感じました。確かに課金によって装備を早期に入手することはできますが、ゲーム内でも十分に資金を稼ぐことができ、地道に進めていれば同じ装備は自然と揃います。
つまり、これは"時短アイテム"としての意味合いが強く、無課金でのプレイでも何ら問題なく物語を楽しむことが可能です。あくまで「時間を買いたい人」向けの選択肢として存在しているに過ぎません。
主人公アルノの葛藤と成長、愛と復讐の物語
本作の主人公・アルノは、シリーズお馴染みのように悲劇を背負った人物。幼い頃に父親を殺され、その復讐を胸に秘めてアサシン教団の門を叩きます。
アルノの性格には、かつてシリーズの顔として人気を博した"エツィオ"を思わせるような、人間味とユーモアが垣間見える一面も。完璧ではないが故に、どこか共感を覚えるキャラクターとして描かれています。
しかし、彼の復讐心が強くなるにつれて、アサシン教団が掲げる「信条」との間に摩擦が生まれていきます。そのギャップが物語の一つの軸となっており、プレイヤーはアルノの葛藤と成長、そして己の信念との対峙を体験していくことになります。
エリスとの愛が彩る、革命下のパリ
物語を語るうえで欠かせない存在が、アルノの幼馴染であり恋人でもある女性「エリス」です。彼女はテンプル騎士団側の人間でありながらも、ただの敵対者というわけではありません。
エリスとアルノの関係性は非常にドラマチックで、まるで映画のようなストーリー展開が繰り広げられます。敵対する立場ながらも惹かれ合う二人の関係は、革命に揺れるパリの街並みに溶け込み、まるで運命に翻弄される愛の物語のようです。
最終的に心に残ったのは、復讐の果てにたどり着く結末以上に、エリスとの愛の物語の美しさでした。アサシンとしての道だけでなく、一人の人間としてのアルノの心の変化が丁寧に描かれ、プレイヤーの感情にも深く訴えかけてきます。
総評:アサシンクリードファンなら一度は体験すべき名作
『アサシンクリード ユニティ』は、グラフィック・アクション・ストーリーのどれをとっても高い完成度を誇る作品です。課金やRPG要素の導入など、賛否の分かれる新要素もありますが、決してそれがマイナスに作用しているわけではありません。
むしろ、原点回帰と進化の両方を兼ね備えた本作は、シリーズにおいて大きな転換点となった作品とも言えるでしょう。
革命の熱気と混乱が交錯するパリの街を、ぜひ一度、あなたの手で歩いてみてください。その景色と物語は、きっと忘れがたいものとなるはずです。