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まさかのゴブリンが主役!
ゴブリンと言えば申し訳ないが端役のモンスターという印象が強かったわけだが、本作では主人公に大抜擢されている。
この時点で日本のゲームでは絶対に通らないような企画と思うのだが、それを見事にやってのけたのが凄い。海外ゲームの間口の広さと、計り知れない可能性を見せつけられたというのがクリア後の率直な感想でもある。
主人公のスティクスは盗賊を生業としており、身軽さと狡猾さを頼りにその名を知られる存在。
そうした名声が時に思わぬ事態も呼び込んでしまう。
簡単に言えば、巻き込まれるような展開から物語の歯車は回り始めていき、いつしか世界を揺るがす出来事の中核へと迫っていく感じ。
ただし、スティクス自体は盗賊であるというスタンスは最後まで変わらず、そこに一つの誇りと一貫した生き方をみることができて、種族など関係なく好感が自然と持てた。
また、ゴブリンが主役であるということで登場するのがゴブリンだけと思われるかもしれないが、普通に人間も存在すれば、エルフやトロールなどの異種族も登場する。
人間と異種族が共存する世界の中で、ゴブリンは卑下される存在のように描かれており、そうした環境でも己の才覚をもって生き抜くスティクスがどんどん男前に見えてくる所が、このゴブリンゲームの真骨頂かもしれない。
ダークファンタジーな雰囲気が漂うが、中には息をのむような美しい景色が拝めたりもする。
練りこまれたステージクリア型ゲーム!
本作の面白いところは、壮大なオープンワールドを思わせる作りながら、エピソードごとにステージが用意されている設計という点だ。
一つ一つのステージが大きな箱庭のような形で用意され、エピソードを進めるたびに追加されていく。
ステージ(マップ)はそれぞれ独立した形で、一つクリアすればアジトに戻り、そこからミッションを受注し次のステージが展開される。
ファミコン世代の人間には懐かしい仕様でもあり特に違和感はないが、広大なオープンワールドを散策したいという人には馴染まないかもしれない。
ミッション(エピローグ)にはクリア以外にも様々な条件が課せられており、それをクリアすることでスキルポイントが獲得できる。
スキルポイントに関しては後述するとして、決してアクションゲームが得意ではない私には、タイムアタックやサブミッションをこなす余裕はなかったことだけは正直に伝えておく。
ステルス特化型ゲームであることを念頭にしなければいけない!
これまで私がプレイして生きたステルス系ゲームと言えば、メタルギアシリーズにアサシンクリードシリーズ。
しかし、今回のスティクスは前者の2作品とは全く別物と考えてよい。
と言うのも、ゴブリンであるスティクスは決して戦闘向きな種族ではなく、それは本作の基本設計となっており、困った時の力業が出来ないのだ。
正確に言えば、スティクスを操作し敵をキルすることができる。しかしミッションに課せられた条件でもそれは避けるべきものと設定されている。
さらにステージを進めていくと、全くこちらの攻撃を受け付けない敵が多数登場し、やはり敵を倒して進むというアクション要素は排除した設計となっている。
その為、もとより浅い私のステルスゲーム経験値は殆ど通じず、一から学ぶということが必要とされた。
まず本作は、初見からスマートにクリアできるような作りとなっておらず、【死にながら覚えていく】ことを求められる。
用意されているステージはそれほど多くないのだが、難易度が歯ごたえのあるものになっているので、それに費やす時間と試行錯誤などにより遊びごたえは十分。
とにかくトライアンドエラーを実践する中で、スティクスが盗賊であるということの理解と、隠密行動こそがクリアへの近道ということを自分に言い聞かせる忍耐力は必須だった。
ミニマップのようなものも用意されていないので、まさに自分の足や目を使いながらステージを把握し攻略していかなければいけない。
その攻略中には、最大限の警戒心を持って敵の気配を察知しながら隠密行動をとることが優先され、ときに物陰に隠れながら敵の行動パターンを観察する必要もある。さらにステージ事に用意されたギミックを利用したり、くまなくマップを踏破しながら抜け道を見つけるなど、これまでにないステルスゲームを満喫できる。
ステージはどれもダークファンタジーの世界観をうまく表現した作りで、非力なゴブリンを操作することも手伝い、より緊張感を演出してくれる。
スキルラインにより様々なアプローチが派生!
スティクスでは、ミッションをこなすことでスキルポイントを獲得することが出来る。
5つのスキルラインはゲームを有利に進めていく上で欠かせないものから、プレイヤーの遊びの幅を拡張するものなどが用意されており、中には驚くような斬新なものまであり、それらを駆使してステージを攻略していく楽しみを提供してくれている。
それでも、スティクスが非力であることは変わらず、軽業師のような身のこなしと慎重な行動を重きに置くプレイスタイルが重点に置かれた作りは、ストイックさとゴブリンという種族へのリスペクトを感じずにはいられなかった。
そして最後に、このゲームからメーカーの確かな実力と、ゴブリンへの惜しみない愛を限りなく感じられ、とても思い出深い作品となったことを綴っておく。