ロロナの系譜を正統に継ぐ意欲作としての魅力
『トトリのアトリエ ~アーランドの錬金術士2~』は、私が以前プレイした『新ロロナのアトリエ』の続編にあたる作品です。とはいえ、『新ロロナ』は後年に発売されたリメイク版であり、実際の発売順としては『トトリ』の方が先となります。そのため、グラフィックやシステム面では、後発である新ロロナの方が洗練されている点も見受けられます。
しかし、本作が劣っているかといえば決してそんなことはなく、むしろ『トトリ』ならではの魅力がしっかりと根付いています。システム面の新たなアプローチ、世界観の広がり、キャラクターの掘り下げ――それらが重なり合い、単なる続編ではない「挑戦と深化の物語」が展開されていました。
なかでも特筆すべきは、主人公トトリと、前作ヒロインであるロロナとの関係性。師弟という枠に収まらない、心のつながりが丁寧に描かれており、ロロナを通じて成長していくトトリの姿が実に印象的でした。これは、アーランドシリーズとしての一貫性と世界観があるからこそ味わえる贅沢な体験だと感じます。
冒険者としての成長物語――錬金術師と冒険者の二重生活
『トトリのアトリエ』における最大の特徴の一つは、トトリが「錬金術師」であると同時に、「冒険者」を目指すという二重の立場にあることです。
前作以上に広大となったワールドマップや、後半に登場する“航海”という新たな要素は、まさに冒険者としての物語を色濃くしてくれる要素となっています。特に、トトリの家族に関わるメインストーリーが航海という形で発展していく展開には、胸が熱くなる瞬間が多々ありました。
一方で、プレイヤーには「冒険者」としての活動と、「錬金術師」としての作業を並行してこなすという、やや複雑なゲーム進行が求められます。そのため、計画的な時間管理やスケジュール調整が必要となり、初見では少し戸惑うこともありました。
とはいえ、それが本作ならではの“遊びの妙”ともいえます。効率的に時間を使いながら、自分だけの物語を組み立てていく過程は非常に楽しく、アトリエシリーズが長年愛されてきた理由の一端を垣間見ることができました。
良かった点と気になった点まとめ
◎良かった点
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岸田メル氏による美麗なキャラクターデザインが、世界観の魅力を最大限に引き出してくれる
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前作から登場するキャラたちの「その後」を描いており、ファンにはたまらない展開
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主題歌・BGMが心に残る名曲揃い。会話もフルボイスで没入感が高い
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冒険者という新たな側面の追加により、物語と遊びの幅が大きく広がった
△気になった点
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採取や戦闘にも時間経過が適用されるため、序盤は特にシビアな印象
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トゥルーエンドの条件が極めて複雑で、攻略情報なしでは達成が困難
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調合の成功率やアイテムの検索・並び替え機能などに、やや不親切さを感じる場面も
世界観の拡張と物語の深化――シリーズファン必見の仕上がり
物語面でも、本作は非常に高い完成度を誇っています。ロロナの物語を下地にしながらも、トトリ自身の成長と挑戦を描くことで、続編でありながら“新しい物語”としてしっかりと独立している点が素晴らしいです。
加えて、今作で初登場するキャラクターたちとも自然に関係を築いていく形で、シリーズとしての世界観に有機的な広がりが生まれています。前作から登場しているキャラクターたちの年齢や立場の変化が、年月の経過をリアルに感じさせ、より深い感情移入を促してくれました。
そして、錬金術と冒険という二つの軸が物語の中心を担う構成は、非常に巧みで、どちらか一方に偏らず、バランスの取れたゲームデザインになっています。それによって、クライマックスに向かっての盛り上がりが自然で説得力のあるものとなっていました。
高い完成度と独自性を兼ね備えた、アーランドの名作
『トトリのアトリエ』は、まぎれもなくシリーズ屈指の良作であり、アーランド三部作の中でも一際強い印象を残してくれました。特に、前作に登場したキャラクターたちが自然な形で登場し、物語に深みを与えてくれる構成は、シリーズファンにとって感慨深いものとなるでしょう。
一点だけ、トゥルーエンドの条件だけはもう少し緩和されてもよかったのではと感じます。実際、私も攻略本や攻略サイトの助けがなければ到達できなかったほどです。
とはいえ、アトリエシリーズはそもそも“繰り返し遊んで楽しむ”ことを前提としたゲームです。一度では見られなかった展開を、自分なりの手順で探り当てていくという試み自体が、このシリーズの大きな魅力でもあります。
ロロナで出会い、トトリでさらに世界が広がったアーランドの物語。この後も続くシリーズ作品たちに、大きな期待を抱かせてくれる一本でした。